電車の走っていない沖縄では、道路は大切な生命線で、人や物を車両で運ぶために無くてはならないインフラ設備です。とはいうものの、血管のように島内に張り巡らされた道路をくまなく走り回る事はあまり無く、いつも使う決まった道を通って日常生活を送っている人がほとんどではないでしょうか。
一度も通った事の無い道を選んでドライブをしてみたり、通り慣れた道をいつもとは違った角度から見てみると、思いがけない景色に出会うことがあります。
Since there is no railroad in Okinawa, roads are the most important infrastructure for land transportation on the island. And if you look at the roads from different angles, some of them are surprisingly artistic.
沖縄自動車道 うるま市石川伊波に架かる高架橋
The Viaduct near Ishikawa Interchange on Okinawa Expressway
恩納村仲泊と、うるま市石川の間は沖縄本島の西海岸と東海岸の間の距離が一番狭い場所で、直線距離で約3キロです。何年もの間、仲泊~石川の行き来はここを結ぶ県道73号線を使っていましたが、つい最近、同僚と石川の市街地へ向かう時に、73号線に沿うように走るいわゆる「裏道」を教えてもらいました。近くに住んでいたのにそれまで通った事が無かった事に驚きでしたが、それよりも驚いたのは、そこに広がる景色でした。
畑の間をくねくね走る片側一車線の田舎道で、道路脇の広場には黒くて立派な牛が繋がれています。そして電照菊畑や緑の葉を揺らすサトウキビ畑、青々と茂った原っぱを横切るようにアーチが連なったコンクリート製の橋が掛けられています。
これは沖縄自動車道の石川IC~石川伊波の丘の間に架かる高架橋で、多少周辺の牛舎からワイルドな香りが漂ってきますが、そこだけまるでヨーロッパの片田舎の様な牧歌的な光景で、イギリス南部のサセックス(Sussex) にあるウーズバレー高架橋(Ouse Valley Viaduct) を思い起こさせるデザインです。この景色を目の前に、頭の中でふいに「おお牧場はみどり」が流れ始めます。
沖縄自動車道は何度も通っていますが、道路の下にこのような景色が広がっているとは全く想像もしていませんでした。
歩いて高架橋の下へ向かいます。橋の下には小川が流れていて、水際まで下りられる階段もあります。
真下から見る高架橋は迫力です。
地面からの高さは目測で30m(?)ほどで橋脚部分にアーチ型の開口部があり、合わせ鏡を覗いた時のように開口部のアーチが小さくなりながら奥の方へ続いています。
近くの牛舎から「モ~~~」と聞こえてくる牛の声で、車へ戻る頃には頭の中で流れていた曲がいつの間にか「ドナドナ」に替わっていました。
Until very recently, I did not even know there was a beautiful arch viaduct, which is a part of Okinawa Expressway, near Ishikawa Interchange even though I have driven on it so many times in my whole life. The viaduct in Ishikawa-Iha standing in the middle of the green field reminds me of beautiful Ouse Valley Railway Viaduct in Sussex, England which is Grade II listed building of the Historic Buildings and Monuments Commission for England.
那覇空港自動車道 南風原高架橋
Naha Airport Expressway Haebaru Viaduct
沖縄でアーチの美しい高架橋と言えば、知る人も多い南風原(はえばる)高架橋です。西原町から南風原町にあるイオン南風原ショッピングセンターへ向かう下道(自動車道ではない一般道路)から圧巻のアーチを見る事が出来ます。
伊波の高架橋がどっしりと貫禄があるのに対して、南風原高架橋の見た目はすっきりスレンダーで、私が特に気に入っている部分は西原JCT近くの高架橋が2段に分かれている場所です。
設計を行った千代田コンサルタント九州支店の南風原高架橋についての説明によると、「橋梁形式の選定にあたっては、…(中略)… グスクや石造りアーチ橋に見られる曲線の優美さを連続的に配置したRC連続アーチ橋形式を選定しました」との事で、全長828mの橋は21のアーチで支えられています。
確かに、中城城址や座喜味城址で見られる沖縄の城(グスク)のアーチ型の城門や、首里城近くにある弁財天堂の天女橋のような、かつて沖縄各地の川や池の中島にかけられた石矼(いしばし)、そして民家のワーフール(豚便所)にいたるまで、石造りアーチは古来、沖縄の生活や文化に浸透してきた建築のデザインで、景色の中にしっくりと馴染みます。
南風原高架橋はそのデザインの美しさから「土木学会デザイン賞2002 優秀賞」を受賞しています。
ちなみに、南風原や伊波の高架橋の美しさが際立っているのは、周りに広がる自然の緑との調和が大きなポイントで、仮に高架橋の周りがコンクリートの住宅街や高層ビルであれば、橋の魅力は半減していたのではないでしょうか。
Another beautiful viaduct is a part of Naha Airport Expressway. The Haebaru Viaduct is 828 meter long arch bridge with 21 arches. You can see the arches from the road runs along Haebaru Dam. Haebaru Viaduct won Civil Engineering Design Prize 2002, JSCE for its design which blends in with surrounding natural environment.
恩納村の仲泊大橋とツマサ橋
Nakadomari-Ohashi Bridge and Tsumasa Bridge in Onna Village
国道58号線を、おんなの駅「なかゆくい市場」から北向けに進むと坂道の頂上付近に架かるのが「仲泊大橋」で、橋の上からはエメラルドグリーンやコバルトブルーに輝く東シナ海を一望する事が出来る絶景ポイントです。そして58号線を仲泊大橋の手前で左側車線から下り、石川方面へ向かって県道73号線へ繋いでいるのが「ツマサ橋」です。
ここは夕方、犬と散歩で時々通るのですが、仲泊大橋とツマサ橋の間にある、集落へ続く階段から見る二つの橋の景色が好きです。
石川向けに右下へ流れるように延びる道とその上に交差して名護向けに、やや左側へカーブして延びる仲泊大橋の曲線、そしてこの無機質なコンクリートと鉄骨の景色が、夕暮れ時、オレンジ色の街路灯が灯ると温かみのあるノスタルジックな景色に変わります。真っ暗な海辺で皆で囲んだキャンプファイヤーや、子供の頃、台風で停電になった家の中で灯したロウソクの明かりのような懐かしさです。
最近は省エネの為だとは思いますが、目玉に刺さるようにまぶしくて冷たい印象の白色LEDの街路灯が増えて少し残念に思っていたのですが、つい先日、人にやさしく虫もよせつけにくい、みかん色の低誘虫LED照明、その名も「美観灯(みかんとう)」をラジオで紹介していました。夕焼け色の美観灯が沖縄でも普及する事を願います。
Nakadomari-Ohashi bridge and Tsumasa bridge are located where route 58 and route 73 in Nakadomari, Onna cross. Tsumasa bridge stretching to lower right direction towards Ishikawa and Nakadomari-Ohashi bridge cross over it running slightly towards left. The concrete and steel frame bridges look very cold, however, at sunset when the orange street lights turn on, the scenery becomes something warm and nostalgic.
彼らの後ろに道はできる
Men at Work
いつもとは違う視点に立って見ると、毎日何気なく通っている何の変哲もない道が見せる、まるで素晴らしい芸術作品のような一面に驚かされます。
私たちの生活を便利にする道、島中をドライブして周れる道(時より、なぜ?と思う場所に道路があったりしますが・・・)、景色に溶け込んだ美しい道。そしてそこには、その道を実際に造る人々がいます。真夏の炎天下、ユラユラと陽炎の立ち昇る灼熱地獄のアスファルトの上や、真冬の強風で体感温度が零度になる中、投光器の下で夜通し現場で働いて沖縄の道を造って来た人達に感謝します!
Our lives became easier and much more convenient because many places around the island are connected by the roads. There are people actually building the roads during hot summer days under the burning sun and on the sizzling hot asphalt, or at the middle of the night during the winter when the temperature drops to zero degree Celsius with wind chill factor. I would like to thank all these people who work hard to make our lives easier and better!