やんばるの大動脈「大国林道」を走る!  "Okuni Rindo" Road in Yambaru, Okinawa

沖縄本島北部「やんばる(山原)」と呼ばれる地域は、貴重な動植物が生息する自然豊かな場所として知られてきましたが、2016年9月15日、晴れて33番目の国立公園に指定され、その重要性が公に認められました。
この13,622ヘクタール(陸域のみ)の「やんばる国立公園」の中心を南北に貫き、「大動脈」とも喩えられる総延長35.5キロの大国林道は、亜熱帯植物の生い茂る森に生息するやんばるの動植物を、ゆっくりと観察する事ができる、大自然の中のドライブコースです。

“Yambaru” or “Yanbaru” is a name for the northern part of Okinawa’s main island. It is known for beautiful nature, and habitat of many plants and creatures that are indigenous to Yambaru. On September 15, 2016, 13,622 hectares (land area) of the area was designated as “Yambaru National Park”. Okuni Rindo road runs through at the center of the park from north to south, and is described as “the main artery” of Yambaru. When the weather is good, it is a perfect place to go for a drive to observe and enjoy great nature of Yambaru.

大国林道へいざ出発!
Let’s Take a Drive on Okuni Rindo!

大国林道は昭和52年(1977年)に工事が着手され、16年もの歳月をかけて平成5年(1993年)に開通しました。林道の起点は国頭村与那、終点は大宜味村大保(たいほ)です。
5月下旬、夏がすぐそこまでやって来た事を告げるイジュの花が、深緑の森の樹冠を、所々白く飾ります。

イジュ Schima walichii

どこからともなく甘い香りが漂うやんばるの森を満喫するため、目的地を大国林道に定めて車を走らせました。
恩納村から林道へ向かったので、終点の大宜味村大保からの出発です。塩屋湾の沿岸を走る国道331号線を東へ進み、大保ダムの標識の出ている道へ左折し、次の交差点で右折をして東側へ進みます。少しすると、気持ちのいい緑のトンネルが現れます。五月晴れの森は、木漏れ日でみずみずしく輝いています。

大国林道は車一台が通れるだけの道幅で、前方から来る車とすれ違えるように、所々に「待避所」が設けられています。道路脇には起点からの距離を示す黄色い標識も設置されています。やんばるの森には沢山の小動物が生息しているうえに、カーブの多い山道なので、速度は20キロ以下に指定されています。自然にやさしい運転を心がけましょう。

しばらくして、突然、目の前に鉄の扉が現れて唖然とします(もしも起点から出発してここへ来ていたら、ものすごく焦ったと思います)。

先へ進めないのかと思いきや、これはマングース侵入防止の為に設置されていて施錠はされてはいないので、扉を開けて先へ進みます。入った後は、必ず扉を閉めましょう。

The starting point of Okuni Rindo road is Yona in Kunigami Village and the ending point is Taiho in Ogimi Village. In May, white flowers of “Iju (Schima walichii) ” started to bloom and decorate thick green tree canopy of Yambaru’s forest. Since it is narrow and winding road, and there are many animals crossing it, the speed limit is 20km/h. There are many turnouts located throughout the road for incoming cars. There is a closed gate close to the ending point of the road in Ogimi Village. This is a gate to prevent mongooses to go into the forest, and it is not locked. You may open it and proceed, but don’t forget to close it after going through the gate!

五感でやんばるを感じる
See It, Hear It, and Feel It!

扉の向こう側に続く道には落ち葉が積もっていて、それ程車の往来が無い事を物語っています。色々な鳥の声がやんばるの森の中に響き渡ります。周りをゆっくり見ながら車を走らせ、時折、待避所へ車を止めて、犬と一緒に林道を歩いてみます。

森の中には、様々な形の花が咲いています。

オキナワテイカカズラ Trachelospermum gracilipes var. liukiuese
アオノクマタケランの実 Berries of Alpinia intermedia

「コンロンカ」は純白の花びらのような「がく」があって、その中央に黄色い星型の花弁がある、涼しげで可愛らしく、この季節にピッタリの花です。

コンロンカ Mussaenda parviflora


ホウロクイチゴ(だと思います)やヤマモモの実もなっています。

ホウロクイチゴ(?) Rubus sieboldii (?)
林道に落ちているヤマモモの実 Berry of Myrica rubra S. et Z.

近くには、超立体的なクモの巣も張られています。

複雑な形に張られた、超立体的なクモの巣 This spider web is so 3D!

もっと先へ進もうとしましたが、何かに怯えた犬が動こうとしないので、あきらめて車へ戻ります。 運転中、車の前や森の中を朱色の小さな鳥が何度も横切ります。胸元が黒っぽかったので、国の天然記念物の「ホントウアカヒゲ」のようです。林道脇には小さな沢がいくつも流れていて、心地よい水音を響かせています。

そして、生い茂る植物で道の3分の1は覆いつくされ、もはや役目を果たしていないカーブミラーが森の中にたたずんでいます。

時折、緑のトンネルが途切れて、山の合間に遠く青い海が見えます。

Driving through the green tunnel of trees, you will see interesting plants and flowers of the season along the road. Stop the car at one of the road side turnouts and turn off the engine. You can hear sounds of many different kinds of birds and running water. Smell the air and enjoy it with your whole body!

冷たくて甘い、やんばるの湧き水
Sweet Spring Water of Yambaru

しばらく車を走らせると、林道脇の岩場にパイプから水が流れ出す、水くみ場が現れます。
「国頭村観光センター」と書かれたバケツが置いてあるので、飲み水のようです。流れ出す水を手ですくって飲んでみます。甘くて美味しい水です!

美味しい水で喉を潤した後、またしばらく車を走らせて「大国橋(おおくにばし)」、そして比地川上流に架かる「長尾橋(ながおばし)」を渡ります。うっそうと茂る木々やヒカゲヘゴに阻まれて良く見えないのですが、橋の下には大量の水が流れる音がします。橋の上からは「ブロッコリー」に例えられる、やんばるの森が見渡せます。

Almost at the middle point of the Okuni Rindo, there is a place where water comes out from a pipe and plastic bucket placed underneath it. The water is cold, sweet, and refreshing!

やんばるの生き物たちとの遭遇
Close Encounters of the Yambaru Kind

寄り道をしながら、ゆっくりと車を走らせていたので、起点から12キロ地点、終点から約23キロの距離を走るのに、2時間近くかかってしまいました。トイレに行きたくなってきたので、残り12キロを急いで進むことにしたその時、突然森の中にモダンな建物が現れました!

青の看板に白い文字で「民宿やんばるくいな荘 Cafe Okinawa Rail(カフェ オキナワ レイル)」と書かれています。このカフェがとても興味深い場所なのですが、Okinawa Railについては、次回 詳しく紹介したいと思います。
トイレと食事を済ませてカフェを後にします。車を走らせて数分もしないうちに、突然大きな生き物が林道脇の泥の中から、森の奥へ逃げ出します。イノシシです!
写真を撮ろうと助手席に置いてあったカメラを手に取る間に、大きなイノシシは斜面の上の茂みのなかへ逃げて行ってしまいました。すると、その背後から縞模様の子イノシシ「うり坊」が数匹、後を追って斜面を駆け上がります。そして同じ場所から、止まっている車の前を天然記念物の飛べない鳥、ヤンバルクイナが走って横切ります。全てが一瞬の出来事です。

逃げるウリ坊の背中(白い円印) Back of the piglet (in the white circle)

一匹だけ、違う方向へ逃げ出したうり坊が、親イノシシがいないのに気づいて、近くの草むらでじっとしています。車から降りて写真を撮ろうかと思いましたが、斜面上の草むらに同じく身を潜めている親イノシシに突進されかねないので、そのままその場を離れました。ヤンバルクイナとイノシシの親子に同時に遭遇する、予想外でラッキーな出来事でした。

色々な生き物や植物を間近で見ることができる、大国林道。自然豊かなやんばるの森が、これからもずっと驚きと感動で溢れる場所でありますように・・・!

After crossing Okuni and Nagao Bridges, and drive some more, a concrete building appears middle of the forest. It is “Cafe Okinawa Rail”. I stopped there for restroom and lunch. This cafe is amazing place and I will write about it next time. Right after leaving the cafe, I saw a big creature running into the woods from the road side right in front of me. It was a wild bore! The little piglets with stripes on their backs also following their mother. Also at the same time, actual Okinawa Rail jumped out of the bush, and ran cross the road in front of my car. Okinawa Rail (Gallirallus okinawae) is a bird inhabit only in Yambaru area. And it is endangered species and Japan’s natural treasure. It was unexpected and such close encounter with them! This wonderful and amazing Yambaru must be protected forever for all of us.