綱引きと言えば、運動会やレクリエーションなどで行われるスポーツとして定着していますが、沖縄では「大綱ひき」と呼ばれ、夏から秋の伝統行事として各地で行われています。県内で有名な大綱ひきは那覇大綱挽、糸満大綱引、与那原(よなばる)大綱曳などがありますが、2018年11月11日、沖縄市泡瀬で5年ぶりとなる泡瀬大綱引きが行われました。
Tag-of-war is a popular traditional event that is held in many areas in Okinawa. Some of the most famous ones are of Naha City, Yonabaru Town, and Itoman City. On the 11th of November 2018, the giant tag-of-war was held for the first time in 5 years in Awase area in Okinawa City.
全長100メートル、重さ16トンの大綱!
100m Long and 16t Rope!
沖縄県中部に位置する、その名も「沖縄市」の東側、太平洋に面した泡瀬地区には、干潟の広がりが南西諸島最大級と言われている自然豊かな泡瀬干潟や海鮮料理で有名な「パヤオ直売店」のある泡瀬漁港があります。県内地域の多くでは大綱引きは毎年行われていますが、泡瀬の大綱引は5年ぶりの開催です。前回の泡瀬大綱引は2013年、その前は2003年の開催でした。2018年の大綱は長さ100メートル、重さ16トンの立派な綱です。
大綱は東(あがり)と西(いり)の2本に分かれていて、東が雄綱、西が雌綱です。そして雄綱と雌綱は「カヌチ棒」と呼ばれる丸太で中央で一つに結合された後、綱引が始まります。
Awase area is located on the east edge of Okinawa City and right by the Pacific Ocean. Tag-of-war in most of the areas in Okinawa is held annually, however, in Awase, the last event was held in 2013, and the one before was in 2003; 10 years prior to the last one. In 2018, the giant rope is 100 meter long and weigh 16 tons. The rope is first separated into two parts; east and west (east rope is male and west rope is female). Right before starting the tag-of-war, the ropes are connected by a log called “Kanuchibo”, and become one giant rope.
伝統芸能からエンターテイメントまで楽しめる道ジュネ―
Enjoy “Michi June-e” Performances
大綱引当日午後12時、泡瀬のメインストリート「県道85号線」通称「泡瀬ベイストリート」の交通規制が始まり、午後2時、道ジュネ―が行われる会場へ徒歩で向かいます。
いつもは車通りの激しいベイストリートが車両通行止めで閑散として、道の両脇には出店が開店の準備を始めています。道路沿いの飲食店もテントの下にビールケースで作った即席のイスとテーブルを置いた屋台を準備しています。そして静かに眠る竜のような大綱が道路の中央に横たわっています。
道ジュネ―の会場は「カヌチ口」と呼ばれる東と西の綱の先頭が交わる中央の広場で、獅子舞、太鼓、ウクレレ演奏やエイサー演舞が次々と行われます。地元のグループの他、外国人のメンバーがいるインターナショナルなグループも、一生懸命に、だけどイキイキ楽しそうにエイサーを踊ります。
この日は、立冬も過ぎたというのに半袖でも歩き回ると汗ばむ暑さの良く晴れた日です。綱引が行われることを告げる太鼓やホラ貝、鐘の音が辺りに響き渡ると、少しずつ人々が集まり始めます。
私が育った地域でも大綱引きが毎年行われていて、子供の頃、綱引きが始まる前に聞こえてくるホラ貝や鐘の音を「プープーガンガン」と呼んでいた事を思い出します。
あの頃、地域の行事は自分よりずっと大きな大人達が取り仕切っていたのに、いつの間にか彼らの年齢を通り越して、今、目の前で一生懸命に大綱引の準備に取り掛かっているのは、うんと年下の若者達です。
まだ車道を歩く人はまばらで、多くの人は真夏の様な日差しからのがれるように街路樹や建物の陰に入ってカヌチ口で披露される演舞を見学しています。大綱の周辺に立てられた「テークドゥルー」と呼ばれる鮮やかな旗頭と風になびく色とりどりの吹き流しが青空の下によく映えます。
実際の綱引は午後7時に開始なので、まだしばらく時間があります。昼間は体力を温存するために一旦退散して夜改めて会場へ戻る事にしました。
Route 85, also known as “Awase Bay Street” was closed to cars at noon and the street became like a ghost town. As walking toward where the heads of two ropes meet around 2 pm, I started hearing sounds of taiko drums, bells, and conch shell horns. Michi June-e entertainments took place at the intersection near Awase Bijuru Shrine. There were lion dance, taiko drum, ukulele, and eisaa performances. Men in black costumes with blue and red scarves wrapped around their heads were busy getting ready for the main event that would start later that night.
熱気あふれる大綱引会場
Ready, Get Set, Be Happy!
午後7時過ぎに会場へ向かうと、テークドゥルーに明かりが灯され、大通りに鐘やホラ貝、太鼓の音が響き渡って、すでに綱引は始まっています。リズム良く鳴る鐘や掛け声に合わせて、黒の衣装に白の地下足袋、赤や青の「サージ」とよばれる布を頭に巻いた数人の若者が大綱の先頭に乗って旗を振っています。余談ですが、沖縄のサージは魔法のグッズで、頭に巻くと誰でも皆カッコよくなります。雄鶏のトサカやライオンのたてがみの様な効果でしょうか。
昼間とはうって変わって通りは人で埋め尽くされて(主催者発表5万人)、人気の居酒屋の屋台の前には20メートル以上の列ができています。
あちこちの屋台から漂ってくる煙、通りすがる女性達の香水の匂い、中央分離帯に腰かけて焼きそばを食べる人、スマホを片手に会場にいる友達を探す人、ゲームの景品の光るオモチャやイヌの形の風船を引っ張って歩く子供達。皆、「祭り」という非日常の空間を楽しんでいます。
綱の引き始めから15分、どちらも互角に引き合い、会場には東と西を応援するアナウンスが響き渡ります。残り5分を切ると、さらなる熱気の高まりを感じます。
心なしか綱を引く掛け声も大きく力強くなっています。制限時間30分で綱引が終了です。今年はどちらも2メートル以上引き込めず引き分けでした。
When I went back to the Bay Street little after 7pm, the street was filled with people and all kinds of sounds. The tag-of-war was already started. A couple of guys in black costumes were standing on top of the giant rope and cheering for their team. 15 minutes later, the rope did not move much to either side. And when they announced the remaining time was 5 minutes, voices got louder and both sides of people started to pull harder. At the end of 30 minute period, neither side pulled the rope more than 2 meters into their side, so it was draw. Still, nobody was mad or depressed, and they both cheered for each other and danced “kachaashii” (traditional Okinawan dance to express joy and happiness) on the rope.
大綱で広がる皆の輪
Everybody Gets Connected
再び道路の上に置かれて魂が抜けたような綱の上に座って皆が余韻を楽しみます。
写真を撮ったり、子供たちは綱の上に立ってポーズを決めています。偶然隣に座っていた人と言葉を交わしていると、面識の無いこの女性が姉の旦那の実家の向かいに以前住んでいた人だった事が判明。姪っ子たちの事もよく知っていました。きっかけは、以前住んでいた地域の綱引きの事を口にしたからでした。「沖縄狭いですね~」の決まり文句が思わず互いの口から出ます。すると、ほぼ同時にフィナーレを飾る花火が始まりました。
伝統行事を通して色々な繋がりを実感します。過去からの伝統を繋ぐために準備に奔走した人たち同士が繋がって、巨大な綱が中央で繋がって、綱と引く人が繋がって、引く人と周りで応援する人たちが繋がって、そして偶然に出会った人と繋がって。綱引の後、家路へ向かう人の流れの中を少し幸せな気分で歩きました。
泡瀬の大綱は、この後、11月24日(土)~ 25(日)開催の「沖縄国際カーニバル2018」の大綱引きに再登場するそうなので、繋がりはまだまだ広がって行きそうです!
Seems like the giant rope has a power to connect everything around it. It connects people of the past and the present day, communities, and everybody who came to see or joined the tag-of-war. The colorful fire works spread in the night sky at the end of the event, and everybody looked happy and satisfied. This year, the giant rope of Awase will be used again during Okinawa International Carnival scheduled on 24 and 25 November 2018 in Okinawa City. I’m sure that there will be more happy faces around the giant rope!