芸術の聖殿、浦添市美術館 Urasoe Museum, the Sacred Palace of Art, in Urasoe City, Okinawa

国道330号線、通称「バイパス」を宜野湾市から那覇市に向かって走り、伊祖トンネルを抜けると左手に浦添市陸上競技場や浦添カルチャーパークがあります。その中にある、周囲の建物とガラリと雰囲気の違う茶色の建物が浦添市美術館です。1990年に日本初の漆芸専門美術館として設立されたこの美術館は、作り手達が魂を込めた作品が安置される「芸術の聖殿」です。

Urasoe Museum is located in Urasoe Culture Park on route 330, just south of Iso Tunnel, in Urasoe City. The museum was established as the first lacquer ware museum in Japan in 1990. There are hints of mixed cultures in the museum building where art pieces are enshrined like sacred mementos.

ボロブドゥール遺跡を彷彿させる外観
Borobudur Temple in Urasoe!?

バイパス側の駐車場へ車を停めて建物を見上げます。

今まで私が持っていた浦添市美術館の印象は、「バイパスを通る時に見える、一見、北海道にありそうな建物」でした。この日駐車場から、階段状に重なる琉球石灰岩の石垣、その上にある四角い台座のような建物の上に八角形の屋根が乗っている姿を見てふと思い浮かんだのは、インドネシアにある世界最大級の仏教寺院遺跡「ボロブドゥール」でした。

夏空をバックに飛び出した屋根がまるでボロブドゥールの「ストゥーパ(仏塔)」のように見えます。

When I parked my car at Urasoe Culture Park parking lot right by route 330 and looked at the museum, it reminded me of one of the biggest Buddhist temples in the world, Borobudur in Indonesia. There are limestone walls look like step pyramid and square buildings with octagonal domes that look like stupas sitting on top of the pyramid.

正面入り口へ向かう道
The Path to the Museum

駐車場から美術館正面入り口へ続く道沿いにはハイビスカスやハマユウ、プルメリアなど南国の植物が植えられています。綺麗に手入れが行き届いている気持ちのいいこの場所は格好のウォーキングコースのようで、向こうから女性が速足で歩いてきます。

入口へ続く階段下左手にあるピロティ―が涼し気です。昔々子供の頃、サントリーローヤルのちょっと不気味なテレビコマーシャルで初めて見た、ガウディの作品を思い起こさせます。

これはガウディへのオマージュなのか?八角形の柱が立ち並ぶピロティ―の床には大きな八芒星のデザインが施されています。どうやら設計者は「八」にこだわりがあるようです。
There are hibiscus, plumeria, and beautiful tropical plants along the path to the museum. Right before going up the stairs to the entrance, there is a shaded area with octagonal pillars and, instantly, Park Guell in Barcelona came to my mind. I wondered if the architect designed this to pay homage to Gaudi. There are octagons on the ceiling and eight pointed stars on the floor as well.

直線の重なりが美しい美術館入口前の広場
The Court Yard

クワズイモやオオタニワタリが両脇に茂る琉球石灰岩の階段を上ると美術館入口前の小さな広場があります。
建物の壁は、出っ張った四角がデザインされたタイルで覆われています。広場には細長い教会の鐘の塔のような建物があり、小さな広場のシンボルになっています。

真っすぐにそびえたつ姿、八角形の屋根、壁の凹凸のあるタイルの小さな市松模様の規則正しい影が美しいデザインです。エントランスホールや展示室は、四角い箱をいくつも連結したような直線的な美しさがあります。太陽の角度が少しずつ変わるのと同時にタイルの陰も動き、壁の表情が刻々と変わって行きます。

どことも例えられない異国のような空間に、真っ青な夏空の下、深い緑色の琉球マツの枝や、色とりどりのクロトン、サンダンカの鮮やかな赤が柔らかさと涼しい木陰を作っています。
植え込みの中の木の枝から、丸い玉を繋いだようなつぼみがいくつも垂れ下がっています。サガリバナです。日没に咲き始め、甘い香りを放つという夏の夜を彩るサガリバナの花言葉は「幸運が訪れる」です。

When you get to the top of the stairs, there is a small court yard in front of the entrance hall of the museum. The octagonal shaped tower stand straight up into the sky is covered with small tiles with 3D squares on the surface. The sun creates shadows underneath the tiny squares and the shapes of the shadow change constantly as the sun moves. The geometric shapes and straight lines of the museum buildings are really beautiful under the blue sky!

東西文化のクロスロード
Where The East Meets The West

浦添市美術館を設計したのは、内井昭蔵(うちい しょうぞう)さんという戦後の日本建築史を代表する建築家です。ウィキペディアによると、祖父や父親も建築家で、父親は幾つかの教会の設計に関わっていて、子供の頃から教会で過ごす事が多かったようです。1984年に浦添市立図書館の設計も行っているので、浦添市とは縁の深い建築家です。

内井さんは正教徒だったそうですが、手掛けた作品の中には教会だけでなく寺などもあります。
気になっていた「八」ですが、正教会でよく用いられる「八端十字架(はったんじゅうじか)」や聖堂の様式の一つである「星形(八角形の星)」、「スーリア・マジャパヒト(マジャパヒトの太陽)」と言う、インドネシアにあったマジャパヒト王国期(1293~1478年)のヒンドゥー教の八芒星の形をした曼陀羅などがありました。ちなみに、海洋国家だったマジャパヒト王国は琉球王国とも交易を行っていたそうです!

想像がどんどん膨らんでいきます。浦添市美術館がボロブドゥールのストゥーパのように見えるのも、その中に過去からの大切な記憶が安置される場所と考えていたからでしょうか?教会のような寺院のような様々な文化が混ざり合った浦添市美術館は、建築家がどういう気持ちでここを造ったのか色々な思いを巡らせてしまう興味深く美しい建物です。

Urasoe City Museum was designed by Mr. Shozo Uchii. He was a Japanese architect who played important role in Japanese architectural history. Mr. Uchii was also an Orthodox Christian and he had designed not only churches, but also temples in his lifetime. Seems like the designs used for Urasoe Museum have influence of many different cultures. Octagonal shape is one of the typical Orthodox church styles and it represents a star. In Majapahit Empire (1293-1478) in Indonesia, eight pointed star was called ‘Surya Majapahit (The Sun of Majapahit)’ and it is consist of nine Hindu deities in the center. And as already mentioned, whole building from the distance looks like Borobudur temple, and yet, geometric patterns are associated with culture of Muslim. Looking at this beautiful museum, my imagination goes wild and crazy!

一流アーティストたちも「いいね!」北斎の魅力
The HOKUSAI Exhibition

沖縄タイムス創刊70周年記念および琉球銀行創立70周年記念企画展「江戸の天才絵師 葛飾北斎~北斎漫画と富嶽百景(ふがくひゃっけい)~」のポスター


そもそも今回浦添市美術館へ行ったのは、2018年7月14日(土)~ 9月2日(日)に開催されている「江戸の天才絵師 葛飾北斎~北斎漫画と富嶽百景(ふがくひゃっけい)~」の企画展を見に行くためでした。日本を代表する絵師で、富士山をバックに大波が小舟を飲み込んでしまいそうな『富嶽三十六景 神奈川沖浪裏』は多くの人が一度は目にした事があると思います。

今回の浦添市美術館での企画展では、全15編の「北斎漫画」(現代のいわゆるマンガではなく絵手本)と富士山をテーマにした「富嶽百景」が展示されています。北斎漫画には、江戸時代の人々や動物の仕草、表情がありのままの姿で描かれていています。だらしない姿で読み物をしたり、変顔をしたりと、現代の私たちのような日常の姿に親近感が湧きます。そして、ちょっとコミカルなタッチで描かれた人々が今にも動き出しそうに生き生きとしています。

また、富嶽百景は、まるで写真を撮るように斬新な構図で描かれています。富嶽百景はモノクロですが、冨嶽三十六景のような鮮やかなカラーの作品は、まさにインスタグラムの先駆けで、当時の人々に衝撃を与えたでしょう。北斎の絵のすごい所は、その切り取った一瞬の空気や音、匂いが絵から伝わってくる事です。

そして、北斎の作品を見たヨーロッパの一流アーティスト達はこぞって北斎をパクります。ゴッホは、『星月夜の神奈川沖浪裏 』という北斎の作品と自身の代表作の一つの『星月夜』を合体させた作品を制作しましたが、これこそ一流アーティストが北斎へ送る最高の賛辞と言えるでしょう!

The reason that I went to Urasoe Museum this time was to see The HOKUSAI Exhibition that is held between 14 July – 2 September 2018. Hokusai Katsushika (1760 – 1849) was one of the most popular and talented artists of Japan. I think many people have probably seen The Great Wave off Kanagawa before. Hokusai became very popular in Europe as well and artists such as Gogh, Monet, and many more painted or created works with influence of Hokusai.

浦添市美術館
住所:沖縄県浦添市仲間1-9-2
電話:098‐879-3219
FAX:098‐878‐1221

Urasoe Art Museum
Address: 1-9-2 Nakama, Urasoe, Okinawa
Phone: 098-879-3219
FAX:098-878-1221