宜野座村の北、ちょうど名護市との境界に松田区潟原(かたばる)があります。干潮時に広大な干潟が現れるのが、その名前の由来だと言われています。しかし、雨が降ると山から赤土が海へ流れ出る為、干潟が現れても、一面、赤土に覆われている様にしか見えません。一見、生き物など寄り付きそうにもない赤土の干潟を歩いてみると、たくさんの生命で溢れた小さな宇宙が広がっていました!
Katabaru is an area of Matsuda Ward in Ginoza Village on east coast of Okinawa Island. When the tide goes out, a huge red tidal flat appears on the coast of Katabaru. Although it does not look like there is much to see from a distance, you can find many interesting creatures there, and enjoy breath taking view when you walk on the tidal flat!
赤土の砂漠へ降り立つ
Desert of Red Clay
宜野座村を通る国道329号線と西海岸へ抜ける県道71号線が交わる交差点(「やかそば」があります)のあたりが、潟原です。交差点を海岸の方へ向かって道なりに進むと防波堤が現れます。この向こうに広がるのが太平洋で、左手の加知味崎から右手奥の岩場までの、ぐるりと小さな湾のようになった場所に、潮が引くと広い干潟が現れます。
この近くを通る度に、この赤い不毛の大地の様な場所に生き物がいるのか気になっていました。まだまだ暑さの残る10月の日曜日、潮の引ききった干潟へ下りてみます。
何の障害物もない、広々とした干潟を前に、犬は大はしゃぎで走り回ります。真っ青な空をバックに、波で作られた砂紋や砂に埋もれた流木がさらに砂漠っぽさを演出しています。赤い大地の向こうに一直線に伸びる青い水平線はさながら蜃気楼の様です。
干潟に立つと、遠目には何もないように見えた赤土の上は、無数の小さなカニと「砂団子」で埋め尽くされているのが分かります。
Around the area where Route 329 and Route 71 meet is Katabaru. If you go towards the ocean from the intersection, you will see seawalls along the road and you can walk down to the tidal flat from there. When the tide is on the ebb, with ripple marks and driftwoods, it looks like red desert spreading in front of your eyes.
全宇宙はカニによって創造された!?
Crabs Everywhere!
干潟を埋め尽くすカニに近づくと、クルクルと回転しながら、素早く砂の中へ潜ってしまいます。ミナミコメツキガニよりもずっと小さくて、砂と見間違う色をしています。
調べてみると、2010年に琉球列島固有種で、新種だと判明した「リュウキュウコメツキガニ」の様です。その場でじっとしていると、カニが再び砂の中から現れて、せわしく砂を口に運び始めます。砂の中の栄養分を食べて、残りかすの砂を吐き出してできるのが砂団子です。カニの巣穴の周りには、花火のような模様を描いて砂団子が広がっています。
少し前にネットで見た「銀河系を遠くから見た姿」(The Most Detailed Map to Date of Our Place in the Universe)の様にも見えます。こうなると、想像がどんどん膨らみ始めます。カニの巣穴がブラックホールで、この干潟が全宇宙。でもその向こうには広大な太平洋が広がっていて・・・と果てしなく続いていきます。
立ち上がって水際へ向かって歩いて行くと、今度は紫がかった灰色の丸い体が特徴のミナミコメツキガニの集団に遭遇します。
こちらも、近づくと素早く砂の中へ潜って行きます。ミナミコメツキガニは、横へ移動するカニ歩きではなく集団で前進するので、英語では「Soldier crab(ソルジャークラブ)」と呼ばれています。沖縄に生息するミナミコメツキガニも琉球列島固有種だそうです。
When you stand on the tidal flat, you will see whole area covered with hundreds and thousands of crabs and small sand balls. One kind of crabs live there is called Ryukyu Kometsukigani (Scopimera ryukyuensis). In 2010, researchers found out that Ryukyu Kometsukigani are new species and Ryukyu Islands endemic species. Ryukyu Kometsukigani takes nutrients out of sands and spits out the sand balls. Around its burrow, small sand balls make patters like fireworks . It also reminds me of “The Most Detailed Map to Date of Our Place in the Universe” which I saw on the internet the other day. Then, I started to imagine that burrows of crabs are black holes and the tidal flat is the entire universe, but there is ocean beyond the universe, and goes on and on…! I stood up and walked towards the edge of the universe. Near the water, there were groups of bigger grayish purple crabs on the sands. These are “soldier crabs (Mictyris brevidactylus)”. They walk forward instead of to the side just like an army of soldiers. Soldier crabs in Okinawa are Ryukyu Islands endemic species also.
まだまだいる、干潟内生命体
Other Inhabitants of the Tidal Flat
カニ以外に何かいないのかと探して歩いてみると、掃除機のように砂の上を歩き回るホウシュノタマガイを発見します。
この貝は肉食で、砂の中にいる二枚貝などを捕まえて食べます。移動する時に跡を残すので、意外と簡単に見つける事ができます。
その他にも、長い「吻(ふん)」と呼ばれる口の延長のようなものを砂の上に伸ばすユムシがいます。指で半透明の吻を触ると、メジャーが巻き戻るようにヒュルヒュルっと砂に潜ります。
実際の体は太ったミミズのような細長い円筒形で、砂の中深くにあります。
川の水が流れ出る辺りには、浅瀬にたくさんの小魚やオキナワフグが泳いでいて、水辺ではサギが餌場を取り合ってか、互いに飛びかかって追い払おうとしています。
二枚貝の殻もあちこちに落ちています。生き物など住めないほど赤土で汚染されていると思っていた潟原の干潟は、多くの生命で溢れていました!
There are more lives on the tidal flat of Katabaru. A shell fish “Natica gualteriana” moves on the sand looking for clams. “Urechis unicinctus” has snout at the one end of the body and stretches it out of the sand. The actual body is under deep sand and looks like round earthworm. In the shallow water, there are many small fish and “Okinawa-fugu (Chelonodon patoca)” swimming around. A “Great egret” and “Pacific reef heron” are trying to catch them. The tidal flat is filled with lives!
息を飲む風景に癒される
Breath Taking View!
日を改めて、潟原の干潟へ向かいました。朝日が上がった直後の満潮時の海を見ながら、防波堤沿いを歩きます。週末に台風が接近する予報が出ているのに、嵐の前の静けさか、そんな気配は全く無い静かな海です。
しばらくして、潮が引き始めた干潟へ下ります。砂の上には綺麗な波跡が残っています。
以前、干潟の砂の上を歩くと、かかとがツルツルになるよ、と教えてもらった事がありました。裸足になってくるぶしまで水に浸かってみます。大きな岩や瓦礫もそれほど無いので、ケガをする心配も無く、砂の上を素足で気持ち良く歩けます。
まだ水が引ききっていない場所に、空が反射して素敵な光景が現れます。空と地上が交わる干潟は、まるで自然が凝縮された「箱庭」ならぬ、「箱宇宙」です!
I went back to Katabaru on a different day. When I got there right after sunrise, the area was still filled with water. After awhile, the tide started to go out and tidal flat appeared. I took off my sandals and walked barefoot on the sand. There are not so many big rocks or debris and sands under my feet were soft and very comfortable. Sky reflected on the places where water was still left.
“And I think to myself what a wonderful world”!