戦火を逃れたたずむ金武観音寺と鍾乳洞 Kin Kan-nonji Temple and Limestone Cave in Kin Town, Okinawa

金武町金武の住宅街の中に、こんもりと緑が生い茂り、一見小さな植物園のように見える場所があります。推定樹齢約370年のフクギや、アカギの大木が根を下ろす鎮守の杜には、沖縄戦で多くの社寺が焼失した中、本島で唯一、戦火を逃れた金武観音寺が静かにたたずんでいます。

Kin Kan-nonji temple is a small temple located in Kin area in Kin Town, and is the only temple which survived the Battle of Okinawa during the World War II in Okinawa Island.

鎮守の杜
Woods Around the Temple

金武観音寺は、金武町を通る国道329号線をキャンプ・ハンセンのゲート前から北向けに進み、居酒屋「金海」のある交差点を「金武観音寺」の標識に従って左折し、少し進むと左手にあります。観音寺の向かいには寺専用の駐車場もあります。

入口から境内へ続く道の脇には、幹回りが約3メートルもある金武町文化財にも指定されている立派なフクギがあります。近づくと幹には不思議な模様があり、オオタニワタリやシダも着生していて、大きな生き物のように見えます。

境内には、赤い花を付けた椿、沖縄ではあまり見ることのないイチョウの木もあります。小さな池の周りには、沖縄では「クバ」と呼ばれるビロウや月桃、オオタニワタリやシダが生えていて、やはりここが南国である事を感じます。
アカギの大木が枝を伸ばす木陰にはテーブルと椅子もあり、腰を下ろすと心が落ち着きます。静かな境内は木々のエネルギーが満ちる鎮守の杜です。

A huge “Fukugi” (Garcinia) tree is standing near the entrance of the Kin Kan-nonji. It is estimated to be about 370 years old and designated as a Tangible Cultural Property of Kin Town. There are also other tropical trees and vegetation surrounding the temple. The place almost looks like a small botanical garden, and is very relaxing.

金武観音寺と金武権現宮
Kin Kan-nonji Temple and Kin Shrine

金武観音寺にある説明板によると、高野山で修行を積んだ日秀上人(にっしゅうしょうにん)という室町時代(16世紀)の僧が、熊野から観音様が住むといわれる浄土を目指して小舟に乗り、琉球国金武の富蔵津(現在の富花《ふっか》)に漂着し、補陀洛浄土を観じたこの土地に観音寺を創建したそうです。そして同じころ、金武鍾乳洞内に熊野三所権現を勧請(かんじょう)し、金武権現宮を建立したそうです。明治時代の神仏分離令発令後も観音寺と金武権現は一体とみなされ、金武権現が鎮守として観音寺を護り、現在も多くの人々の信仰を集めているそうです。

金武観音寺の正式名称は「高野山真言宗 金峰山観音寺」です。残念ながら、寺は昭和9年(1934年)に焼失して現存する建物は昭和17年(1942年)に再建されたものだそうですが、これは、第二次世界大戦で多くの建物が焼失した沖縄において、古い建築様式をとどめる貴重な木造建築物で、昭和59年(1984年)6月には金武町の有形文化財にも指定されました。

台風や夏の湿気も多い沖縄なので現存の本堂も老朽化した箇所が所々に見られますが、それでもシンプルで美しい建物です。

現在、本堂および仏像等の修繕を予定していて、平成26年より修繕費用の寄付金を募る「勧募のお願い」を行っています。寺には、本堂や仏像のどの部分の修繕を行いたいかを分かりやすくまとめたパンフレットも置いてあります。

The Kan-nonji temple was established by a monk named Nisshu-Shonin in the 15th century. He got on a small boat and left Kumano in mainland Japan for the pure land and drifted ashore at Kin in the Ryukyu Kingdom. He then established the temple in Kin. There was a limestone cave near the temple, and Nisshu-Shonin also transferred gods from Kumano shrines to the cave in Kin and established Kin Shrine. The original temple was burned down in 1934, and new temple was re-constructed in 1942. During the Battle of Okinawa in 1945, many temples and shrines in Okinawa Island were destroyed and Kin Kan-nonji was the only temple that survived the war. However, the temple is getting old and needs to be restored. They are currently asking for monetary donations for restoration of the temple and statues of Kan-non and Nyorai (Goddess of Mercy and Tathagata).

日秀洞
Nisshudo Cave

金武権現のある鍾乳洞は、観音寺の境内の一角の大木の横に入口があり、日秀洞とよばれています。ここは、「琉球八社」と呼ばれる王府から特別の扱いを受けた神社の一つ「金武宮」で、「金武権現(熊野三所権現)」と、仏法を守護し水界を司る竜族の王である「水天」が祀られています。

入口の階段を下りていくと、鍾乳洞の中に祠があり、洞窟内の鍾乳石には、「仏天閣」、「金、銀の滝」、「大仏天蓋」などの名がつけられています。鍾乳洞は途中で先に進めなくなってるのですが、実際は現在立ち入りが禁止されている「大広間」と呼ばれる場所などがあり、中々の広さがあるようです。

誰もいない鍾乳洞へ一人で入ってみましたが、とても落ち着く場所です。洞窟の入口に戻る階段を下から見上げると、まるで新しい世界へ生れ出るような気分です。なお、日秀洞の開門時間は07:00~16:00です。

Kin Shrine is one of eight shrines in Okinawa that received special attention of the royal government of the Ryukyu Kingdom. The shrine is located in the limestone cave next to the Kin Kan-nonji and the cave is called “Nisshudo”. Gods of Three Main Kumano Shrines called “Kumano Sansho Gongen” and “Suiten” which is the King of dragon family are enshrined in the cave. the cave is open between 0700-1600 daily.

金武鍾乳洞にある「龍の蔵」
“Dragon’s Cellar”

実はこの鍾乳洞は全長が約270メートルもあり、年間を通して一定の気温を保っているので、泡盛の古酒蔵としても利用されているそうです。日秀洞入口の反対側にあるもう一か所の入口付近には、金武鍾乳洞の古酒蔵「龍の蔵」があり、中を見学する事ができます。
チケットは金武観音寺の駐車場隣にある龍の蔵の「観音茶屋」で購入する事ができます(大人400円)。龍の蔵のウェブサイトには、見学ツアーの半額割引券もあるので、前もって印刷をして行けばお得です。
龍の蔵は、自然環境を活用した日本初の古酒蔵で1988年に完成したそうです。観音寺裏手にある「金武酒造」の泡盛のボトルキープサービスを行っていて、5年、8年、12年、または20年後に成熟した自分だけの古酒を受け取ることができます。貯蔵期間満期が近づくと案内が届き、現地受取、発送、または継続を選択できるそうです。

鍾乳洞の入口から階段で地下の古酒蔵へ下りると、階段脇には、1年2か月以上をかけて熟成させる「豆腐よう」(豆腐を泡盛と麹で発酵させたチーズの様な食べ物)の入れ物が並べられています。洞窟の中は静かで、時折水滴がポタリと垂れます。鍾乳洞内の棚に何千本もの泡盛のボトルが整然と並べられている光景は、芸術的でさえあります。

The total length of the limestone cave is about 270 m long, and a part of the cave is used as a cellar to age Awamori by a local company because the temperature inside the cave is stable through out the year. The ticket to enter the cellar is sold at the store right next to the Kan-nonji parking lot. You can also purchase a bottle of Awamori and place it in the cellar for 5 years, 8 years, 12 years, or 20 years. Thousands of bottles in the shelves lined up in the cave are impressive to see!


高野山真言宗 金峰山観音寺
住所:沖縄県国頭郡金武町字金武222番地
電話:098-968-2411

Kin Kan-nonji
Address: 222 Kin, Kin Town, Okinawa
Phone: 098-968-2411

金武鍾乳洞の古酒蔵「龍の蔵」
住所:沖縄県金武町字金武245番地
電話:098-968-8581

Kin Limestone Cave “Tatsu-no-Kura (Dragon’s Cellar)”
Address: 245 Kin, Kin Town, Okinawa
Phone: 098-968-8581